本読み隊
本の感想・紹介です 。主にコバルト文庫・角川ビーインズ・ビーズログ文庫・一迅社アイリスなどの少女趣味ライトノベル、ハーレクインなどの海外ロマンスなど、3500冊。★スマホからご覧になる方は「海外ロマンス読了一覧」など一部の記事のスクロールが長くなるの場合、”PC”ボタンでPCに切り替えて見ることをオススメです★
飛天の風 六男坊と陰陽師 深山くのえ
2016年07月04日 (月) 22:58 | 編集

飛天の風 六男坊と陰陽師 (ルルル文庫)
2016/5/26
深山 くのえ (著)

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飛天の風
六男坊と陰陽師 

深山くのえ

時は平安、太政大臣の六男坊・藤原有視は、陰陽寮の学生・安倍春秋とともに、「密かの賊」と呼ばれる一味の盗みの現場に遭遇し、なりゆきで事件に関わる羽目になった。そんな時、有視は幼なじみの小色と再会する。小色に心を寄せる有視だったが、彼女はなぜか有視を避け続ける。一方、有視の身に迫る危機を感じ取った春秋は、自分の式神を有視に分け与えようとするのだが…!?平安陰陽師物語、ここに開幕!
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男二人が主人公の陰陽師ものです。太政大臣の六男坊・藤原有視と、陰陽寮の学生・安倍春秋とが出逢い、事件を解決するという、男子の友情もの。
BLっぽいねちっこさはないです。
有視の幼馴染の少女との再会に期待していただけに、かなりの裏切られ感。
有視速攻で失恋です。
乙女の胸キュンはナシです!
深山くのえファンは、購入する際はご注意。

作者といえば、薄幸美少女の切なさと、それを救うヒーローという構図を期待していただけに、かなりの方向転換に、一ファンとしては面食らってしまって、感想らしいものが書けないのだが、男子の友情と陰陽師が好きな方なら楽しいのではないのかと…

あらすじ
「何してんだ、邪魔!」
「……は?」

太政大臣の六男坊として身分の低い母から生まれた藤原有視は、次兄・公佐にいいように使われ、真夜中の文の使いの途中だった。
突然、小男にぶつかられ、挙句細身の男がぶつかってきたうえに、邪魔扱いされた。
好きで身の丈が六尺近くあるわけではないというのに。
さらに、太刀を腹に刺した男が、ふらりと現れ、二人の目の前で死んだ。
そのため、検非違使を呼ばれた挙句、状況説明を求められ、細身の男の正体はわかったけれど…


冒頭の経緯。太刀を腹に刺したまま男が死んだ現場に居あわせた六男坊・藤原有視と、陰陽生・安倍春秋。
春秋が、兄の小言を回避するように機転をきかせてくれたことで、有視は陰陽寮に礼を言いに行った結果、式神などを見ることができると知ることに。
そんなとき、有視は幼馴染の小色と再会し、有視は懐かしさから何度も会いに行くが…

視点は有視からなので、乙女のときめきを求めてはいけない。
もちろん、ベテラン作家だけあって起承転結もしっかりしているし、有視と春秋はいいコンビだったし、式神の動きも良かったし、それなりに普通に面白いのよ。
…私の読書の範囲が狭すぎるのが悪いの。

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隠れ姫いろがたり 雪の下 深山くのえ
2016年05月21日 (土) 18:48 | 編集

隠れ姫いろがたり-雪の下- (ルルル文庫)
2015/12/22
深山 くのえ (著)

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隠れ姫いろがたり 
雪の下 

深山くのえ

三歳のとき何者かにさらわれた皇女、純子。十二年後に素性が判明し都に戻されるものの、周囲に馴染めず孤立する。そんな中、教育係としてやってきた兵部卿宮、理登だけは純子を理解し、二人は愛し合うようになる。しかし純子の生母である弘徽殿の女御は、密かに他家との縁談を画策し…?二人の恋の行方は?ついに明らかになる十二年前の事件の真相とは!?さらわれた皇女の平安恋絵巻完結編!
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理登の手回しによって弘徽殿から離れることができた純子は、幸せの中にいたけれど…

もっと続いてくれると思ったのだが、2巻完結です。弘徽殿再びで、純子の危機。そして、さらわれた当時の状況などが明らかになり、すっきりとまとまる巻です。

あらすじ
理登が帰ってしまった後の、独りでいる時間が嫌いだった。誰かが起きてくれれば気がまぎれるが、誰もいないと、ふいに不安になって、泣きたくなるときがある。次にいつ理登に逢えるのか。また突然、逢えなくなってしまうようなことが、起きはしないかと  
……恋をするって、こんなに怖いことだったのね。
純子は脇息にもたれ、軽く目を閉じる。
恋をする覚悟ができた、と、いつか理登が言っていた。
あの時は、その言葉の意味を、全部は理解できなかったけれど。

「……朝露の……置きて別れし……」


P17抜粋。右大臣の息子が純子との結婚を望んでいるという。慌てた理登は主上に純子を妻にもらいたいと直訴したことで、主上も純子の気持ちを尋ねることに。しかし、すでに弘徽殿からの話しがあったため、望む結果にならないということは、覚悟しておいてくれと言われてしまい…

右大臣をやりこめる理登がかっこよかった。
ラストも、当時の状況や真実が明らかになり切なく苦い雰囲気の中で、理登の言葉がとても嬉しいのです。
元気なヒロインという設定が作者向きに感じなかったり、弘徽殿に再び捕まった辺りは展開的にありきたりに感じる部分もありだったが、2巻完結で手に取りやすい文字量なので、ぜひ一読。

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隠れ姫いろがたり 紅紅葉 深山くのえ
2016年03月16日 (水) 14:01 | 編集

隠れ姫いろがたり -紅紅葉- (ルルル文庫)
2015/8/26
深山 くのえ (著),

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隠れ姫いろがたり 
紅紅葉 

深山くのえ

今上帝の息女・純子は、三歳のとき何者かにさらわれたものの老夫婦に保護され育てられた。十二年後、素性が判明して都に戻されたが、庶民の娘として育った純子に周囲は驚き失望する。そんな中、教育係としてやってきた兵部卿宮・理登に純子は心ひかれていくのだが…!?さらわれた皇女が宮中に戻る時、過去の事件と秘めやかな恋が動き出す!田舎娘として育てられた皇女の成長と恋を描く平安恋絵巻!
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深山くのえさんの描く薄幸美少女が好きです。
ヒロインは、田舎育ちのお姫様。12年ぶりに都に連れ戻されたはいいが、貴族の女性の礼儀作法も知らない純子は、女房たちの悪口にさらされ窮屈な思いをしている。そんなときに、兵部卿宮・理登が彼女の教育係としてやってきて、彼を信頼するようになるというお話。
予想より明るく前向きで元気なヒロインですが、我慢を重ねた上で不意に彼の優しい言葉に触れて吹き出すように溢れ出るヒロインの涙が良いです。
文章全体は、ローティーンからでも楽しめるように、平安時代の風習などをヒロインの何も知らない目線で簡単完結に説明してくれるのでわかりやすく、手にとりやすいです。

あらすじ
……どうしたって、無理があるんだよね。
これでも自分なりに、言われたことは、必死で覚えようとしている。だが、生まれてから15年のうちのほとんどを、ただの田舎の小娘として過ごしてきたのだ。
どんなに豪華なものに囲まれていても、田舎者には、お姫様らしい暮らしなんて気詰まりなだけ。
そうとわかっていれば、あのときこっそり、どこかへ逃げたものを  
いや。
「……そんなこと、できなかったよね」

3歳で何者かに連れ去られ、12年ものあいだ行方知れずだった今上帝の息女・純子の生活は一変。本当の両親だという帝と弘徽殿の女御、それに自分の双子の兄らしいがそれほど顔が似ていると思えない皇子と対面した。
だが喜ばれたのは最初だけ。田舎育ちだとすっかり失望され、10日目には母の実家で兄の右大臣・藤原盛道という人物の邸宅に追いやられた。
純子はきつく目を閉じ、涙がこぼれそうになるのを抑えてから、ひとつ息をつく。泣くことさえ無駄なだけだ。
幼子が遣水に落ちそうになっているところで、我慢ができず庭に降り、着物は泥だらけになってしまった。
そんな折、現れたのは年かさの女房・高倉。彼女が教育係として連れてきた兵部卿宮様・理登は美しくて…

「高倉。宮様、いい方ね。とってもきれいだし。わたし、こんなにきれいな人、初めて見た」


冒頭の経緯。理登の両親は前の帝を呪詛したと言われており、女房からは不満の声があがるが、窮屈な思いをしていることを理登が言葉にしてくれたことが嬉しく、純子は彼の訪れを心待ちにするように。
しかし、思いの外早く後宮に連れ戻されることになった純子は、理解しあえない母や兄の存在に再び苦しむことに。
毎夜うなされる川の記憶は、攫われた当時のものなのだろうか…

理登は、左大臣の息子・直輔から失踪当時の話を本人からひきだしてほしいと頼まれているが、素直に彼を信頼する純子を大切に考えるようになるのだ。
引き離されてへこむ彼が、立ち上がってくれる姿は乙女的に嬉しい。
物語は、二人が恋人になるまでだが、
右大臣VS左大臣派という構図での板挟みになるのか?彼女が攫われた経緯や、弘徽殿の実母の意地の悪さなど続刊でどんな展開をみせるのか楽しみ。

でもラストにきて、急にくっついた二人にちょっと驚く。
作者の作品は、清楚な薄幸美少女の純愛を重視しているようで、お泊り?描写がないけどそこんとこどうなの!と叫びたくなるものがたまにあるのだが、これも後朝の文(きぬぎぬのふみ)!ってことは、理登手早くない?!裳着前だっていうのに?!とコーヒー吹く。高倉…この娘、お尻ペンペンしたほうがいいと思う。秘密の関係に浮かれてますヨ。

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でも、二巻完結のようです。2015/12/22
浪漫邸へようこそ 花開く日 深山くのえ
2015年07月09日 (木) 23:03 | 編集

浪漫邸へようこそ ~花開く日~ (ルルル文庫)
2015/4/24
深山 くのえ (著)

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浪漫邸へようこそ 
花開く日 

深山くのえ

秘密の下宿屋「浪漫邸」を始めた貧乏子爵家の令嬢・紗子は、下宿人の帝大生・伊織への恋心を自覚する。伊織もまた紗子への想いを胸に秘めていた。そんな中、下宿人・時雄の幼なじみ、四郎が転がり込んできたあげく、紗子を自分の恋人と言い出す。その時、ふだん冷静な伊織の激情がついに溢れ出て…!?そしてその夜、伊織の部屋を訪ねた紗子が彼に伝えた言葉とは…!?甘く切ない大正時代のラブロマンス、ここに完結!
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3巻で完結です。
一本芯の通った奥ゆかしい紗子と、高値の花と決め込んでいた彼女への思いと募らせた伊織とのほのぼのした関係がとってもロマンチックなお話だった。
巻を重ねるにつれ、窮地の彼女を機知で救う彼の見事さが際立ってきたことで、ルルル乙女はメロメロです。
面倒な祖母の登場の二巻は片付いたものの、両家の面倒が続きます。
ラスト巻は伊織の父、紗子の父の登場へと2人の問題が急浮上。
三話構成で、ラストにその後のSSあり。
2人の恋の道のりを着実に歩み始めるトキメキいっぱいのラスト巻です。
もっと続いて欲しい所だったが、気持よく終わってとても嬉しい。

あらすじ
●第一話 困った料理人
下宿人の佐久間時雄の幼なじみ、四郎が転がり込んできた。仕事先のお嬢さんに駆け落ちごっこに付き合わされた挙句、首になり、時雄を探していたらしい。
だが、いびきのうるさい四郎に迷惑をかけられ、一度は追い出したものの、今度は紗子を自分の恋人だと言い出し…!?

●第二話 それぞれの事情
縁を切った養父が再び連絡を求めてきた。会うべきか悩む伊織に、下宿仲間は…

●第三話 求婚騒動
紗子に目をつけた船会社の御曹司・大道が、突然求婚してきた。迷惑きわまりない言動に、きっぱりと断りを入れた紗子だが、大道は伊織とは子供時代の知り合いらしく、ライバル心をむき出しにし…

●番外編 卒業したら


ラスト巻なので、細かいあらすじは割愛。
「ただの紗子でいたい」そう言ったことで、2人の仲が進展しはじめます。どんなふうに進展するのかは、お楽しみで。
2人の未来を強固なものにするために、財力も権力もない彼が、己の知恵を頼りに周囲を巻き込み確実にしていく様を、紗子視点で知らずに読むことになるので、とてもワクワク。
独占欲むき出しで豹変する伊織にきゃぁ〜〜!だな。
紗子はドギマギが多くて活躍はなかったが、そんな彼女が可愛らしくて、良いのです。
あきさんの絵が浪漫チックな2人にピッタリのシリーズだった。ラスト巻も、p61のあきさんの伊織といい、壁ドン(ドアドン?)といい、眼福。ごちそうさまでした。

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浪漫邸へようこそ 初夏の嵐 深山くのえ
2015年04月12日 (日) 14:25 | 編集
浪漫邸へようこそ ~初夏の嵐~ (ルルル文庫)
(2014/12/26)
深山 くのえ

浪漫邸へようこそ ~初夏の嵐~ (ルルル文庫)

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浪漫邸へようこそ 
初夏の嵐 

深山 くのえ

ある事情から、秘密の下宿屋「浪漫邸」を始めることになった貧乏子爵家の令嬢、紗子。心優しき下宿人たちとの同居生活を続けるうち、紗子は、その中の一人、伊織へのほのかな恋心を自覚する。伊織の従兄弟、藤馬が窈盗事件に巻き込まれて突然傷だらけでやってきたり、下宿人・光也に美男子ゆえの災難がふりかかったりと、次々起こる事件の中、伊織への気持ちは大きくなる一方で…!?ほんのり甘い大正ロマンの恋物語。
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じわじわと恋を自覚する2巻です。
下宿人の織りなす問題はありながらも、ほのぼのとした日常が描かれます。
伊織と手が触れただけでドキドキして赤面してしまう紗子なのだが、そんな乙女心に無自覚な彼女が、下宿人の指摘によって自覚してしまうというくだりは、たまらんね。たまらんのだよ〜〜!叫
トキメキ痒くて楽しい巻なのだが、後半は祖母の登場で嵐の巻です。
それまで積極的なアプローチを控えていた伊織の変化にキュン転がってくれたまえ!

あらすじ
あの日、借金を工面するために入った質屋で、伊織と出会っていなかったら、きっといまでも、不安ばかりを心に抱えたまま、暮らしていただろう。
あの出会いに自分は救われたのだと  紗子はいつも、そう思っていた。

台所と茶の間がにぎやかにごった返している中、勝手口の近くにいたしのが、様子のおかしな光也に焦れたのか、つかつかと近寄って、腕をつかむと、思いっきり引っぱった。
光也はあっさりと戸の陰から引きずりだされ  
「誰なんです?その子」


冒頭の経緯。光也と伊織の従弟にあたる堀切藤馬は、中学校で寮生活をしているが、相部屋の連中に泥棒の濡れ衣を着せられたという。
遠慮する藤馬をしばらく下宿人にすることを紗子は提案すると…

写真館で働く光也は多くの女性から一方的な好意を寄せられ迷惑することが頻繁にあるようだが、今回の孝江という女性もしつこく、住所を特定されたくない光也は写真館に泊まりこむと言う。
ある日、光也に着替えを届けにいったしのは、元亭主に見つかり…

家政婦しのを下宿人みんなで守ることこに。しのを守りたいと願う紗子の回りには、こんなにも親切で力強い見方が大勢いるこということ、そして伊織への気持ちを自覚していく。
ほんのりとした淡い気持ちからの変化が良い巻です。
後半は、自分の娘宅に居候していた祖母が突然の帰宅。祖母と叔母という贅沢な二人の傍若無人な行動に、追い詰められる紗子。
そんな彼女に、機転をきかせる伊織の男らしさが萌です。

次の3巻でラスト!ぬおぉ〜もっと引っ張れそうなのに、すっきりとまとまって嬉しいような寂しいような。
ときめきたい女子にオススメ。

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浪漫邸へようこそ 深山 くのえ
2014年12月09日 (火) 13:40 | 編集
浪漫邸へようこそ (ルルル文庫)
(2014/08/26)
深山 くのえ

浪漫邸へようこそ (ルルル文庫)

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浪漫邸へようこそ 

深山 くのえ

大正初期。ある事情から、十六歳で家を背負うことになった貧乏子爵家の長女、紗子。偶然、危ないところを助けてくれた帝大生、伊織との出会いをきっかけに、紗子は子爵邸で秘密の下宿屋を始めることになる。早速集まったのは、帝大生と画家と本屋、それに作家と写真屋というなんとも個性的な人々で!?ワケあり子爵家ではじまった、賑やかで優しい同居生活とほのかな恋。美しく密やかに、乙女の恋は花開く―大正ロマン譚開幕!
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深山作品のヒロインは今回も幸薄だと思ったら、本を手にしたとたんに口がムフムフしてしまう、本読み隊さくらです。ヨロ。
新シリーズは大正浪漫。
放蕩者の父が家を出て、若くして一家の主として頑張らなければならなくなったヒロイン・紗子。
火事で下宿を探すことになった帝大生医学部の伊織は、質屋という場所で戦いに挑むような凛とした彼女の姿に一目惚れ。
そんな、偶然の出会いから下宿を営むことになるまでが描かれる巻です。
薄幸のヒロインの健気に頑張る姿と、ほのかな恥じらいを含んだトキメキの描写が素晴らしい期待値の高いシリーズでございますッ!
とはいえ、二人の出会いと、子爵邸が下宿となり人が集まってくるまでの物語の序章なので、取り立てて素晴らしいストーリーとはいえない。今後の展開次第。
あぁでも、この二人が、恥ずかしげに見つめ合う緊張感の描写だけで、ご飯三杯いけるッ!
あきさんのイラストとのコンビとあれば、期待せずにはいられない!…続刊しだいだけど…。

あらすじ
春だというのに、指先がひどく冷えている気がして、沙子(すずこ)は右の手で自分の左手を握りしめた。
濃紺ののれんの隅には、白抜きされた、丸に質の一文字。
大正四年四月、日露戦争以降続いている不況は、いまだ好転する気配がない。沙子の不運は、菖蒲小路家が華族の中でも資産に恵まれていない、公家での出であること、そして、父が放蕩三昧の末に借金まで作って逃亡したこと  これにつきる。
生まれて初めて、女中しのを伴い、質屋ののれんをくぐった。だが、酔った店の主は沙子のほうへを手を伸ばしてきた。
そんな沙子の窮地を救ったのは、学生服の青年だった。
きちんとした店の者が奥から出てきて、着物を質に入れお金を受け取ることができた。青年はインパネスを質に入れるらしい。沙子としのは、互いにちょっときまずい表情になっている。耳を傾けるのは行儀が悪いと思いつつも、主と青年の話が気になって、つい聞き耳を立ててしまっているからだ。
下宿の火災で、持ち物が煙でいぶされたらしい。
青年は始終涼しい表情をしている。いくら下宿とはいえ、突然住まいを失うのは大事だったろうに、落ち着いたものだ。
店を出て、助けてもらった礼と見舞いを言うと、青年は思い入れのある独逸語(ドイツ)の辞書を失ったことが唯一残念だと語る。

「あの  差し上げます。辞書」


冒頭の経緯。辞書を渡すために、彼女は青年を屋敷に連れて帰る。青年の名は山ノ内伊織。帝大生医学部。
その彼に、父の借金を取り立て人に返済する姿を見られてしまった。
子爵邸には、紗子の弟尚彦、女中の林しのと娘りん、使用人の佐久間時雄だけだ。弟は伊織になつき、泊まることになるが、その夜不審者が…

前半は、彼女の苦境と伊織の経緯。
下宿をうしなった伊織に、思い切って下宿にすることを提案した沙子だが、
本当の気持ちはさよならを言えないせっぱつまった気持ちのから出たもの。
そんな二人の淡い感情が、とってもルルル背中痒いのです。
後半は、子爵邸が下宿というのは体面が悪いので、書生ということを条件に伊織の紹介であつまった面々とのやりとりと紹介です。
癖のある仲間達がそろったところで、続刊ではどんな問題が起きるのか楽しみにしております。

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