本読み隊
本の感想・紹介です 。主にコバルト文庫・角川ビーインズ・ビーズログ文庫・一迅社アイリスなどの少女趣味ライトノベル、ハーレクインなどの海外ロマンスなど、3500冊。★スマホからご覧になる方は「海外ロマンス読了一覧」など一部の記事のスクロールが長くなるの場合、”PC”ボタンでPCに切り替えて見ることをオススメです★
拾われた1ペニーの花嫁 カーラ・ケリー
2015年11月16日 (月) 18:02 | 編集

拾われた1ペニーの花嫁 (MIRA文庫)
2014/1/10
カーラ ケリー (著)

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拾われた1ペニーの花嫁

カーラ・ケリー

見知らぬ土地でお金もなく、これからいったいどうすればいいの?老婦人のコンパニオンをしているサリーは、ようやく決まった次の勤め先を訪ねたところ、雇い主が亡くなったと知らされ目の前が真っ暗になった。馬車の運賃を払った今、乏しい蓄えは底をつき、宿代さえない…。サリーは途方に暮れ、最後の銀貨を握りしめて紅茶を頼んだ。すると、見知らぬ紳士が声をかけてきた。困り果てた様子の彼女を放っておけなかったという親切な貴紳、海軍提督チャールズ卿は、サリーの話を聞くと驚くべきことを申し出た-彼との結婚を。
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copyright 2011
The admiral's penniless bride

他の作家とは違った歴史的背景への深い彫込みと、清楚でハートフルなヒストリカルロマンスを描くカーラ・ケリーの作品です。
愛憎と葛藤の情熱的でホットなシーンをふんだんに盛り込んだ昨今のエンタメ的なロマンスとは大きく方向性が違うのでご注意。
笑いあり涙あり。ぎこちないながらも愛を育みあう二人が、もどかしくも痒くて良いです。
そんな二人の周囲を取り巻く人々も興味深く、隣人がおとずれたことのないユダヤ系の差別的な背景や、海軍のお家事情など、歴史的に苦い部分も盛り込まれ、夢見がちなロマンスとはひと味ちがうと感じることでしょう。
拾われるように花嫁となったサリーが、夫に秘密にしていたことで、ラストに大きな山場を迎え、私的に涙が止まらなかった。
是非一読。長く記憶に残るロマです。

あらすじ
サリーは、海軍の夫・アンドリューを亡くし、寒さと飢えで息子を亡くしてから辛い日々を送ってきた。
夫は無実の罪を着せられ、集めた証拠も虚しく、自殺に追い込まれたのだ。
期待していた新しいコンパニオンの仕事は、老人が亡くなっていたことで、追い払われた。
まったく知らない土地で、ほとんどお金がなくなってしまったのだ。
あれはなんだったかしら?アンドリューの口癖は?”紅茶を飲みながら考えれば、たいていの問題はなんとかなる”だった。
サリーは歩きながら、手提げ袋の中をのぞいた。<ドレイク>亭で紅茶を一杯飲むお金はある。

海軍提督チャールズ・ブライトは結婚を考えたが、予定していた花嫁がやってこないことに苛立ちを感じていた。チャールズは急速に冷めていく目の前の紅茶を見つめ、自分の短所を考え始めた。四十五歳はそれほど年寄りだとは思えない。
それに体の大部分も健在だ。左腕は手首の先からすっぱり切れているが、鉤型の義手がそれを補っている。
不意にある女性が目にとまった。みずぼらしく、かなり痩せている。チャールズは彼女ががっかりしている原因に思い至った。
一芝居打つには他に方法が思いつかなかった。

「あれはわたしのいとこなんだ。ちょっとけんかをしてね。わたしと同じ昼食を、向こうのテーブルにも頼む」


冒頭の経緯。サリーは32歳、身寄りもなく、金もなく、仕事もない。そんな彼女の窮状を知ってしまったチャールズは、サリーに結婚を提案する。一旦は断ったものの職業紹介所に職はない。同じような女性も肩を落としており、小さな娘の仕事をとりあげてまで洗濯女になりたくはない…教会で途方に暮れて寝ることに決めた彼女に再び声をかけたのは、チャールズだった。

”海が見えるから”という理由だけで購入を決めた館は、もとは卑猥な目的のために作られた屋敷らしく、猥褻な天使が飛ぶとんでもない館だった。夫婦となった二人は、拗ねるコックをなだめ、寂しいユダヤ系夫婦の隣人と親しくなり、戦争で息子を亡くしチャールズを憎む隣人などに挨拶を済ませ、新しい生活を始めた。
ぎこちない距離を保ちながらも、夫婦としてお互いを理解しはじめた二人。しかし、サリーに懐疑的な従者ジョン・スターキーは、嫉妬し、サリーの秘密を暴こうとし…

サリーの境遇が不憫で、ままならない世の中という現実がとても苦く、そんな中でたくましく生きようとする人々の姿とともに、二人のロマンスがとても素敵に感じるのです。
ヒロインの手紙が泣けてしまった。その手紙を読んだチャールズが自分の短気を反省し、大後悔した挙句、大航海に出たくなる辺りは、ちょっとかわいく感じてしまった。
カーラ・ケリーの作品は大好きです。

海外ロマンス 読了一覧

提督って感じの絵で原作らしくて良いできです。漫画が気に入ったら、原作も是非!



屋根裏の男爵令嬢 カーラ ケリー
2015年09月07日 (月) 18:34 | 編集

屋根裏の男爵令嬢 (MIRA文庫)
015/4/9
カーラ ケリー (著),

---楽天---




屋根裏の男爵令嬢 

カーラ ケリー

男爵令嬢のグレースは、不安に押しつぶされそうになりながら、パン屋の扉を叩いた。借金の山を残した父親が亡くなり、住み慣れた屋敷を追い出され、働かざるを得なくなったのだ。もはや結婚も望めないだろう…。下働きにも慣れ始めたある日のこと、グレースはパン屋の常連で、変わり者の老侯爵と友人になった。そして思いがけない遺産を託される。居心地のいい屋敷と十分な手当、それから戦争で捕虜にされているという侯爵の子息を―。グレースは遺言に従って子息を迎えに行った。予期せぬ運命が待ち受けているとも知らずに。(MIRA文庫 CK01-03)
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copyright 2012
Marriage of mercy

フランスとの戦争が終わり、独立したばかりのアメリカとの戦争が激しくなる中、アメリカ人捕虜収容所として使われていたダートムーア刑務所。
悲惨な歴史的事実を折込みながら、人生の苦渋の中で懸命に生きる二人を描く、ハートフルなロマンス。
最下層の生活から波乱の人生を歩んできたアメリカ人のロブと、落ちぶれた男爵令嬢のグレースの恋の主題は、知恵と処世で人々の心をとらえながらも、ひたすら辛坊し、待つこと。
なので、ドラマチックではあるけれど、夢見がちなロマンスとは遠く、悪役を倒す爽快感や夢のような結末があるわけではない。だが、だからこそリアルで心に残るロマ。
ホットでエンタメな作品を求めると、かなり方向が違うのでご注意。

私掠船とは、海賊行動を国が許可しているもの。アメリカからの許可で私掠船として数々の英国商船を襲ってきたオロンテス号の乗組員達は、1813年に捕らえられ、捕虜としてダートムーア刑務所の人道的とはいえない所で一年を過ごし、感染症や壊血病にかかり仲間は牢から運びだされ、…

あらすじ
鉄格子の隙間から冷たい風が吹きこんでくる。冬は鉄格子を覆うべきだと、どの看守も考えたことすらない。彼らに言わせれば、囚人など風から守ってやるほどの価値もないのだ。
航海長のロブ・インマンにとっては、風こそが命だった。適切な風が帆にどんな奇跡を起こすかをロブは知っていた。
ロブの望みは適切な風が吹くこと、それだけだった。
■□■
男爵令嬢のグレースは、18歳で父が亡くなると同時に屋敷を売りに出され、自活を余儀なくされた。行くあてもないグレースは、借金のあるパン屋のウィルソン夫妻に借金の返済に住み込みで働きたいと頼み込んだ。
それから2年で借金は返済したが、月日は飛ぶように流れ10年経ってしまった。
村の老人トムソン卿が、自らビスケットを買いに来るようになり、トムソン卿と仲良くなったが、老人が亡くなると、グレースに遺言が残された。
年30ポンドの受け取りに加え、卿の敷地内にあるダウアハウス(寡婦用の建物)で庶子の子息ダンカン船長なる人物のみの回りの世話をすることを頼まれた。
ダンカンは私掠船の船長で、ダートムーア刑務所に収容されており、仮釈放中はグレースの付き添いなしで出歩けば、即射殺されるという条件が付けられている。
しかし、新しいトムソン卿は狭量で、ダンカン船長を快く受け入れるつもりがないことは明らかだ。
保釈のため、弁護士のセルウェイとともに地獄のような刑務所内に案内されたグレースは、腐臭の中、弱り切ったダニエル・ダンカンを見て、こみ上げる悲しみをこらえながらその仕切に近づいた。
「もう遅すぎる」と言った船長はグレースに、「いい考えがある」とささやいた。

「わたしの代わりに、ほかの男を連れだしてくれ」

息を引き取ったダンカンは良い指揮者だったと見えて、囚人たちはみな涙を浮かべ、船長を見ていた。
トムソン卿はご子息の臨終の願いをかなえてやりたいと思うはずよ。
「でも誰にするべきなの?」
そして誰を選ぶか決めた。


冒頭の経緯。他の男たちと同様に餓死寸前で具合が悪そうな男ロブ・インマンを、なぜ選んだのか自分でもわからない。
しかしながら、ロブをダンカン船長と偽っての生活が始まった。
気を抜けば、ロブは海とアメリカを恋しがり、逃亡のチャンスを考えている。狭量な新トムソン卿に命を狙われるロブを決して一人で出歩かせるわけにはいかない…

次第に体力を回復したロブを伴い、グレースはパン屋で働きはじめ、ロブも手伝い、始めはアメリカ人として偏見の目で見られていた彼が次第に村人に受け入れられ、ゆっくりとグレースとの愛を育んでいく。
二人を手伝う、庭師エメリーを信頼し、年中ロブを見張るスマザーズを警戒。そんな中、弁護士セルウェイは行方をくらまし、誰を信用するべきか、アメリカとの戦争が終わったにも関わらず、事態は混乱をはじめる…

最下層から始まり、アメリカで自分の家を買い、妻を愛した男は、妻を亡くし、遠くイギリスの地で戦争が終わるのを待つしかない。自国の存続すら危うくなる恐怖のなか、切々と語られる彼の望郷の思いを、身を切られる思いで聞くグレースの切なさと優しさと辛坊強さが良いです。
どこまでも、いい風が吹いてくるまで待つしかない厳しい現実の中で、懸命にあがく二人が、切なくて良いロマでした。

どうでもいいけど、屋根裏感はあまりない。

海外ロマンス 読了一覧
ふたたび、恋が訪れて カーラ・ケリー
2015年08月28日 (金) 16:57 | 編集

ふたたび、恋が訪れて (ラベンダーブックス)
2009/7/26
カーラ・ケリー

---楽天---




ふたたび恋が訪れて 

カーラ・ケリー

19世紀英国。ロクサーナ・ドリューは半年前、夫アンソニーを病気で亡くし、悲しみに暮れる生活を送っていた。ところがある日、亡夫の兄マーシャルから、養ってやるかわりに自分の愛人になれと迫られてしまう。好色な義兄から逃れるため、ロクサーナは小さな家を借り、幼い娘ふたりを連れて移り住む。家の持ち主は侯爵のウィン卿であるが、戦争のため不在にしていた。ある晩、領地の視察をしていたウィン卿がこの家を訪れる。ウィンは悲惨な戦争体験や離婚のスキャンダルのため、人に心を閉ざしていた。だが、健気に生きるロクサーナや娘たちと友情を育むうち、ふたたび人を愛する気持ちを取り戻し…。ヨークシャーの大自然を舞台に、第二の人生を歩もうとするふたりが出会い、さまざまな障害を乗りこえて結ばれるさまを丹念に描いた、心温まる感涙のロマンス。RITA賞受賞作。
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copyright 1994
Mrs.Drew Plays Her Hand

1995 RITA賞”Best Regency Romance”賞を受賞した作品。
部下の温かな家庭を羨ましく思いながらも、泥沼の離婚劇の後で、彼の評判は地に落ち、結婚はもう懲り々だと考える。そんな世を拗ねた男が、苦労しながらも温かな家庭を作る未亡人ロクサーナに恋をする物語。
ヒロインのロクサーナは、夫の兄に愛人関係を迫られ、自活するにも経済的に苦境に立たされている。そんな彼女を守るために心を砕く彼の姿がキュンとくるお話。
カーラ作品は、ホットなシーンは極力すくない(というか3行?)ので、ホットなシーンもある情熱的なヒストリカルロマをお求めの方はご注意。
悪役も最後まで悪役ではない辺りが、とっても心あたたまるロマ。

あらすじ
ロクサーナ・ドリューは他人の敷地に侵入するような女性ではない。たとえ地主がいまこの国にいないとしても。
夫のことを考えてほほ笑むことができるようになったのはありがたかった。
散歩をすることがロクサーナの唯一の気晴らしであり、牧師の夫アンソニーが元気な時から教区の巡回に同行させられた。
妊娠中も歩きつづけた。そしてある日のこと。アンソニーはロクサーナに医師の見立てを伝えた。
ロクサーナを見つめて冷静な口調で話した彼の姿は、一生彼女の脳裏から消えることがないだろう。
それから3年。彼を葬ったばかりの4月や5月にくらべれば、悲しみに浸る時間は短くなっていた。
夫の兄ホイットコム卿が訪れたことを思い出した。義兄は牧師館に新しい牧師を迎えるにあたって、ちさな家を探し自立しようと考えるロクサーナに怒りをあらわにした。
義兄は同居し、愛人になれと言っているのだ。
アンソニーの愛を渇望していたとはいえ、わたしがそこまで切羽詰まっていると思わせる態度を取ったことはない。
物思いにふけるうちに、牧草地に出た。しばらく行くともアランド・パークの芝地に出た。持ち主のウィン卿がまだ国外にいることを考えると、信頼のおける忠実な管理人がいるのだろう。
ひなびた魅力をもつ屋敷の内部が想像できた。まるで幽霊屋敷だろう。
裏庭に回ると、あばら屋と化した離れをみつけた。
中を覗き込むロクサーナに声をかけたのは、管理人のティビー・ウィンズローだった。
25年に渡るフランスとの断続的な戦争と地主不在のおかげでこんなに荒れ果ててしまったのね。
中をみせてもらいながら、ロクサーナはあることをした。すべきではなかったのかもしれない。けれどもどんな女性でも、無人の家を見れば我慢できないだろう。心の中で家具を置き、窓際に娘達のベッドを据え…

「これなら修理できますわ、ミスター・ウィンズロー。それで、一年間お借りするのにおいくら払えばよろしいのかしら?」


冒頭の経緯。義兄に手当の支給額を握られているが、背に腹はかえられず、娘二人を連れロクサーナは引っ越しを決意。管理人の好意である程度は修理され、壁紙などは自分で張り替えることで格安にしてもらった。
だが、献身的な子守のメギーと娘2人での暮らしは経済的に厳しい。
そんな雪の夜、出迎える人もいない屋敷に辿り着いた領主のウィン卿が、彼女の住む離れに転がり込んできた…

従軍し疲れ果て、妻への不安を口にする部下は、温かな妻の腕の中に帰っていった。
だが、自分には結婚に失敗したために出迎えてくれる妻もなく、出迎えてくれたのは口うるさい姉妹達。
二度と結婚するつもりも、子供を持つつもりもなかった。
前の妻があることないことを口にしたため、ロンドンでの悪評にうんざりした彼は、各地に点在する領地を見て回ることにしたが、アランド・パークの館に明かりはない。その時、裏手の離れに未亡人が住んでいると知らされたことを思い出した…

末娘のアマベルは無条件でウィンを信頼し、無邪気で温かな手を差し出し、夫の死を今も悼み、苦境に立たされているロクサーナは、ウィンの施しを嫌がりながらも、彼に感謝し、父の死から抜け切れない長女ヘレンは、ウィンから馬の世話をさせてもらうことで、次第に明るさを取り戻していく。
慎ましく懸命に生きるロクサーナや、ウィンになつく娘たちにほだされ、彼の凍った心が傾いていく様がとても良いです。
ひとつひとつのエピソードがリアルで繊細。
それでいて、中盤の雪山を超えての結婚や、その後のすれ違った二人は、ドラマチック。
遠回りな大人の地味恋をじれったくも、応援したくなるのです。
アイデアで難局を乗り切るという触れ込みの割には、ラストに彼がぼやっとしていたのは、少々蹴飛ばしたいが、大団円に涙でた。

足の指一本くらいと言った彼の男気に惚れたが、後半は放浪野郎と化しみんなを失望させくれる。猛反省してくれたが、彼女の前で告白してくれたまえョ、ページまたいでしまってるヨ、二行じゃ足りないヨ!と突っ込みをいれつつ、キュン転がって楽しかった。


あなたの夢に染まる丘 カーラ・ケリー
2015年08月04日 (火) 23:20 | 編集

あなたの夢に染まる丘 (ラベンダーブックス)
2012/5/25
カーラ・ケリー (著)

---楽天----




あなたの夢に染まる丘 

カーラ・ケリー

19世紀英国。スーザン・ハンプトンは生粋のレディ。25歳の誕生日を迎えたが、ギャンブル狂の父親のせいで社交界デビューもできず、結婚持参金もない。そのうえ家まで失うはめになり、伯母の屋敷へ身をよせるが、伯母はスーザンを使用人のようにあごで使おうとする。そんなハンプトン家から逃げ出すためスーザンは、自ら働きに出ることを決意。しかし、貴族未亡人のお付きの仕事を得てコッツウォルズへやってきた彼女をさらなる困難が待っていた。未亡人の気性は激しく、ドラゴンでさえおとなしく思えるほど。そして、もっと危険なのは同じく未亡人に仕えるハンサムな荘園管理人デイヴィッドだった。しゃくにさわるほど魅力的だけれど、身分がちがう彼から求愛されても、受けるわけにはいかず…。苦悩を抱えながらも、美しく強く生き抜く人々を丹念に描いたRITA賞受賞作。
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copyright 1996
The lady's companion

1997年度RITA賞(ベスト・リージェンシー・ロマンス部門)
ヒロインは、ギャンブル狂の父のせいで社交デビューどころか、全財産を無くし、伯母に頼るよりは自立の道を歩む覚悟をきめます。
働くという事自体、貴族からは反発を買う時代。難物の貴族未亡人の付添人を紹介され、すべてを捨ててやってきたけれど、レディ・ブシュネルは戦場で夫とともに戦いぬいた伝説の女傑で、なんでも自分でできると近寄るすきもなく…

作品中、ヒロインのスーザンが老夫人のために朗読するのは、ジェーン・オースティンの『エマ』。
オースティンが初めて書いた短編小説のタイトルが『レディ・スーザン』ということで、ヒロインの名前と同じだそうです。
この作品はイギリス文学の代表的な作家でもあるジェーン・オースティンをかなり意識しての作品作りがされています。
というわけで、根本にあるテーマは、言わずと知れた高慢と偏見
戦によって心の傷を抱えた、ヒーローのデイヴィッド。小麦に愛情をそそぐ荘園管理人の彼は、侯爵でも伯爵でもなく、平民。
孤児院出の優しい嘘つき。
難解な人物だった未亡人レディ・ブシュネルの人柄を理解するにつけ、スーザンは娘のような存在になり、レディ・ブシュネルのために共に戦い、レディという肩書への自らの高慢さと偏見を捨てる覚悟を決め、大きな飛躍を遂げるのです。
ラストに明かされる、意外な真実と、戦いに傷ついた心が癒やされる瞬間が、素朴で美しい物語です。

あらすじ
父はとっておきの魅力的な笑みを浮かべ、全てが上手くいくと言い続けてきた。もちろん何度もそれを信じてきた。
ちゃんとした持参金があれば、誰かの後妻くらいにはなれたのに、それだって結婚しないよりましよ。
社交デビューするための母の遺産はすでになく、その日の燃料も困る有り様だったが、25歳の今日、すべてを失った。
世間の評判、屋敷、家財道具、そして使用人たちも。
スーザンと父は伯母の屋敷で世話になることになったが、スーザンには伯母の小間使い同然の人生が待っているだけだ。
その上父は、母の唯一の形見の真珠も賭けに持ち出してしまった…
お父様はわたしからすべての物を盗んでしまった。わたしにはもう、失うものは何もない。
スーザンは仕事を見つけることに決めた。

スーザンはユダヤ人の経営する<スタインマン職業紹介所>へ足を踏み入れた。最初は25歳の美しい女性に紹介する職業はないと、ジョエル・スタインマンにあしらわれたものの、一通の手紙が運命を変える。
依頼主のレディ・エメリーヌは、義理の母レディ・ブシュネルの体調を心配し、何ヶ月も何度もお付きの女性を送り続けているが、どなたも気に入らなのだと言う。
依頼主に父が悪名高いロドニー・ハンプトンであることを明かし、自分の覚悟を見せることで、クイリング荘園へ行くことが決まった。

ジョエルは笑った。「おそらく、お友達はあなたが正気を失ったと思うでしょうね」
「あなたはそう思う?」彼女は率直にたずねた。
彼は肩をすくめた。「他人の人生を本当に理解することなどできると思いますか?」
「それでは答えになっていないわ」おもしろいことを言う人ね、とスーザンは思った。
「いいえ、ちゃんと答えましたよ」ジョエルはきっぱりと言ってウインクした。
「いいですか、ミス・ハンプトン。賢いユダヤ人は質問には質問で答えるのです。では、よい一日を」彼はまた家を見上げた。「あなたの幸運をお祈りしましょうか?」
「わたしには幸運が必要だと思う?」


冒頭の経緯。一年間の報酬は父の手袋代にもならないとあしらわれ、伯母からは、謝るか出て行くかだと言い渡された。
雪で立ち往生しながらも到着し、荘園の管理人デイヴィッド、台所番のミセス・スカーロングとその娘コーラと気さくに会話し、意気込みを見せるものの、問題のレディ・ブシュネルを前に、無残な結果を言い渡される。
ところが、行くあてもなく意気消沈するスーザンに、デイヴィッドは突然結婚を申し込み…!?

冒頭で気に入った紹介所のジョエルとの会話を抜粋しました。
ヒーローがどんな人物かは、あえて秘密にしておきましょう。
物語当初、自分の境遇を嘆くだけだったヒロインが、様々な階級に生きる人々の苦悩を目の当たりにし、変化することがテーマになっておりますが、それだけではなく、脇キャラの性格も配置も見事です。
孤独癖のあるレディ・ブシュネルは、第五連隊を率いる夫と娘の死と、息子へ強いた夫の後任への後悔にさいなまれる人物。
物語の最初は出番も少なく未知の人だった未亡人の人柄が見えてくるにしたがって、ヒーローとヒロインの間に強い連帯感が生まれてくる過程が、ぐっときます。
彼の願いであり、未亡人の後悔と真実への道だった、黄金の麦穂。ラストのワンシーンが映像のように鮮やかにイメージできて、涙が出てしまう。
情熱のぶつかり合いもエロティックなシーンもありません。昨今のヒストリカルロマとは違い、ある意味、地味ですが、笑いと涙と胸キュンが全部詰まった素晴らしい作品です。
是非一読。

海外ロマンス 読了一覧
放蕩貴族を更生させるには カーラ ケリー
2015年07月09日 (木) 11:35 | 編集

放蕩貴族を更生させるには (ラベンダーブックス)
2010/3
カーラ ケリー (著),

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放蕩貴族を更生させるには

カーラ ケリー

19世紀英国。侯爵のジョンは戦争で父親を殺され、自らも片目を失って以来、生きる目的を失い自堕落な生活を送っていた。ある日、米国からいとこのロバートとサリーがやってくる。ふたりは、侍女としてエマという女性を連れていた。エマの凛とした態度に心惹かれるジョンだったが、彼女が父親の仇と同じアイルランド人と聞き、暴言を吐いてしまう。そんなエマにさらなる悲劇が襲いかかる。博打好きのロバートが賭け金の支払いに困り、エマの年季奉公契約書を見ず知らずの相手に渡そうとしたのだ。しかし、危ういところでジョンが支払いを肩代わりし、事なきを得る。ジョンに奉公する身となったエマは、彼を更正させたならば、自由人となるという契約をジョンと交わす。かくしてジョンの更生計画が始まった。厳しくもけなげなエマの姿に、ジョンも次第に心を開いていくが…。RITA賞受賞作家の真骨頂が発揮された傑作ロマンス。
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copyright 1995
Reforming Lord Ragsdale

歴史学者でもある作者はその時代の描写が詳細で、政治的背景から庶民の生活に至るまで、貴族を中心としたその時代を生きる人々をイキイキと描写することが得意。
愛憎渦巻く情熱ロマをお求めの方には向かない作品ですが、ひと味違った深みのある物語を是非一読。

時は、19初頭。アイルランドの反乱から五年。苦悩を背負った主人公達がお互い立ち直るまでを描く友情に近いロマ
当時のアイルランドの人々がどのような苦労をしていたのか、日本人にはピンとこない方も多いでしょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アイルランド
飢饉と反乱によるアメリカへの移民や、オーストラリアへの罪人の移住、英国人からの蔑みの実態。ヒロインの生き様から、そのすべてがとてもリアルに感じ、歴史書的な説明ではつかめない背景に、思わず涙が出るお話です。
(アイルランドの移民が差別されていることは知っていたけれど、年季奉公は知らなかったヨ)
ですが、ヒーローの侯爵ジョンが自堕落から抜ける過程で根の良さと快活さを感じさせ、暗い苦悩を背負いながらも強くしなやかに生きるヒロインによって、かなり明るい物語と仕上がっております。

あらすじ
ぼくの愛人はなぜこれほどまでに無知なのだろう。
脳のなかをうじが這いずりまわっているようだ。
兄が亡くなり、父の期待を背負うことになったが、アイルランドの反乱鎮圧で己の無能さゆえに父を暴徒に殺され、自分は片目を失うことになった。
自堕落な生活ですべてを秘書に任せていたが、秘書が金を遣いこんだ。まあいいさ、あの小悪党は流刑地に送られる日をまっている。
ジョンの気分が最悪の状態になりかけていたとき、アメリカから来たいとこのロバートとサリーを母から紹介された。
後ろに控えるサリーの侍女・エマを彼らはウエイティング・ウーマンと呼んだが、彼女にぴったりだと思った。
エマが、彼のギリシア神話の引用に切り返して返事をし、ジョンは賞賛の眼差しを送ったが、同時にエマの低いささやき声に、うなじの毛を逆立てる。あのかすかな訛りは…

「くっそ、きみも、仲間のアイルランド人もくたばってしまえ」

昼下がりの<ホワイツ>の雰囲気も、メイドに暴言を吐いたことへの後悔と恥らいからくるジョンの高ぶった気持ちを鎮めてはくれなかった。
翌日、ロバートをオックスフォードに入学させるために一家は出発したが、深夜宿の主人がジョンのもとへ取り乱して入ってきた。
連れのロバートが、エマの年季奉公契約書を賭けているというのだ。
賭博台を囲む一団にロバートが加わっていた。そしてもう一人エマ・コステロがいた。
一度ジョンと目があったにもかかわらず、彼女は何も言わず目をそらし、反対側の壁をみつめた。
彼女の顔には希望のかけらも浮かんでいない。というより、なんの表情も浮かんでいなかった。
理解できない大きな怒りのまま、ジョンはロバートから年季奉公契約書をとりあげ、賭けの精算にお気に入りの駿馬二頭を手放した。

「ロバート、この書類を取り戻したかったら、ぼくに5千ポンド支払うんだな」

エマの喘ぎ声が聞こえた。ジョンは自分のしでかしたことに驚きながらも背後を振り返り、彼女の手をとって酒場から連れだした。ぼくはたった今ひとりの女を買ったのだ  たいして好きでもないアイルランドの女を、ぼくを嫌っているらしいアイルランドの女を。


冒頭の経緯。ジョンは自堕落な自分に膿んでいた。エマに酔ったまま調子よく「ぼくを更正させてごらん」と言ったことで、エマは”ジョンの更正と結婚まで手を貸す”ことで年期が明けることを契約する書類を作成。彼の酔を利用し、サインさせた。ジョンの母を仲間に引き入れ、翌朝から彼の更正がスタートする。
牢獄にいる元秘書への面会で秘書としての仕事の引き継ぎ、銀行での手続き。容赦のないエマに、ジョンは愛人との別れ話を担当させながらも、エマは確実にこなしていく。
彼の領地への無関心さを改めさせ、ついには彼は結婚を考え社交を始めた…
ジョンは自分が変わりはじめたことで、エマが何者なのか気になりはじめる。
エマは普通のメイドとは違う率直さに腹が立つ。彼女はなかなか自分の話をしてくれない。使用人の生い立ちを主人が追求することにためらいを感じながらも、彼女に頼って欲しい、力になりたいと願うようになるが…

更正からはエマの視点が増えます。ジョンは彼女に抵抗し暴言を吐きながらも、根には暗いところはなく自らを反省という行動パターン。
エマは、言いたいことは言う女性。そのお返しの彼の暴言に絶望的な気持ちになる彼女が描かれながらも、冒頭から彼の心根が書かれているおかげで、彼の行動が読み取りやすくジョンが可愛らしく感じます。
彼が婚約を決めれば、それだけ年期が明ける。探している家族を見つけるのに手間取っている彼女に力を貸し、彼女への気持ちを自覚しがらも、他の女性と婚約までする彼のジレンマには歯噛みして転がれます。ラストの数ページまでジリジリさせられます。
旅立つ彼女のラブレターは良かった。気まずい”みないで〜〜!”という気持ちも痒くて、ここまできてやっと恋愛らしい展開に感無量という、ヒストリカスロマには今どきめずらしいジレジレラブ。
お勧め

海外ロマンス 読了一覧

廃刊になってしまったラベンダーブックスからの邦訳です。
電子書籍が出ないのが難点ですが、古書でも手に入れやすいお値段。
かなり削ぎ落とされておりますが、コミックの方もおもしろかった。


クリスマスに願いを カーラ・ケリー
2015年07月04日 (土) 17:20 | 編集

クリスマスに願いを (マグノリアロマンス)
2013/11/9
カーラ・ケリー (著)

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クリスマスに願いを 

カーラ・ケリー

借金を遺して父親が亡くなってから一家の経済状態は悪くなるばかり。年明けには住んでいる家を手放すことになりそうで、この家では最後だろうクリスマスを楽しく過ごしたいとマリアンは願う。だが、その願いとは裏腹に、弟のアリステアは放校処分になるし、兄のパーシーは貧しい牧師と愛し合う姉のアリアドネにろくでもない結婚相手候補を連れてきた。そして、兄にはもうひとりの客がいた。それは、顔に火傷の痕がある謎めいた伯爵だった。マリアンは、楽しいクリスマスを送ることができるのか!?
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copyright 2011
Marian's Christmas Wish

昨今のヒストリカルロマにはお約束な、いわゆるホットなシーンをお求めの方には向いていない作家なのだが、この作家の作品は、私の求める全てのものがぎゅっと詰まっていると言っても過言ではない作家であり、こちらの作品も乙女痒くて転がれるロマンチックな作品なのだ。
少女から大人の女性への急激な彼女の変化が、同じ人物だと思えないという突っ込みをするか、恋に無関心だったのに、こんなふうに変わることってアルアルと共感するかは、読者にお任せしよう。
ギリシア神話やシェイクスピアの引用、時代背景を考慮した小粋なセリフや小物、家族愛を感じる厨房の風景、俯瞰の位置から見下ろす未来を予想させる構図(弟君の行く学校)…
この作家の作品は、一つのシーンを強調し美しく描くことが上手く、絵画のように感じるのだ。
前半のヒーローに期待値が高いだけに、後半残念な男で、ヒーローにカリスマ性を求める方には向かない作品だが、乙女のトキメキから成長まで一気に楽しめる良いロマ
私のお気に入りの作品。

あらすじ
マリアン・ウィンスティッチは、もうすぐやってくるクリスマスを何がなんでも楽しむつもりだった。
兄のパーシーが、我が家の経済的状況を救ってくれる花婿候補を連れて帰ってきた。
姉のアリアドネは恥ずかしがり屋の牧師と恋を育んでいるというのに、牧師にはお金がなく、強面の兄と対決する勇気もない。
気はいいが経済的にだらしのない父は、多額の借金を残し、このままでは屋敷を手放すしかない。
マリアンは、家族が最後に揃うこのクリスマスを周到に計画してきた。
お客は2人。姉の花婿候補のサー・ウィリアムと、顔に傷のある背の高い男性イングラハム卿。
サー・ウィリアムは、昨夜の騒動(学校をクビになった弟と猫の出産に鉢合わせ)で早速失神させてしまった。
もうすぐ17歳のマリアンだが、おしりをひっぱたくこともあると兄に釘をさされてしまった。だが、背の高い男性は、笑っていたから謝罪を求めることはないだろうという。
兄もイングラハム卿が、招待をうけてくれたことを驚いていると続ける「きっと帰りにくいのかもしれないな…身内というのはたまに面倒になることがあるから」
マリアンの愛する図書室に、イングラハム卿が入ってきた。彼の左頬の十字の傷は生々しく、見たこともないほど焼けただれている。
イングラハム卿ギルバート・コリンウッドと自己紹介してくれた彼に、マリアンは膝を曲げてお辞儀をした。それから無意識にイングラハム卿の頬に手を伸ばし、美しい顔を汚している傷跡にそっと指を当てた。彼が息を止めた。マリアンがその顔を優しく包んで自分のほうに向けると、イングラハム卿は彼女をまっすぐ見つめた。

「痛くないですか?」

「いつも痛いよ。でも軍医はどうしようもないと言っている」

彼はマリアンの手から逃れようとしなかった。
マリアンお手製の動物用軟膏を彼に勧め、昨夜の猫の出産の話をした。紳士と話すには向かない話題だ。我が家でしっかり者でありながら、衝動的で変わり者のマリアンに、彼は微笑んだ。彼の瞳の輝きが勇気をくれた。
厨房に呼ばれ、クリスマス・プティングの願い事をすると彼に教えると、一緒に連れて行ってほしいと頼まれた。
家族全員が順番に願い事をしながら、木べらでかき混ぜる。
マリアンには願い事がたくさんあった。
けれども、マリアンはそれらの願いごとをしなかった。目を閉じて浮かんだことを念じた。
イングラハム伯爵ギルバート・コリンウッドが、人生最高のクリスマスを過ごせますように。


冒頭の経緯。姉の花婿候補は気が小さいわりに尊大で、屋敷を我が物顔で物色する。弟は放校処分。マリアンは女だから男性にチェスで勝ってはいけない。
楽しみにしていたクリスマスがめちゃめちゃになって涙が出そうなマリアンに、イングラハム卿ギルバート(ギル)は、とても優しかった…

ということで、前半は姉の結婚にまつわるクリスマスの家族のドタバタ。ギルに対しては、憧れといたわり、淡い恋は自覚すらなく、妙な具合はお腹がへったからと感じる子供っぽいマリアン。だが、後半は急展開。
彼が傷を気にし、クリスマスを家族と過ごそうとしないと悟ったマリアンは、弟アリステアにそのことを漏らしたが、弟は酔った勢いで、ギルに薬を盛って昏倒させ、郵便馬車で送り届けようと考えてしまった。
ろくでもない展開になってしまったことを嘆きながらも、マリアンは弟アリステアとともにギルを彼の家族のもとまで連れて帰ることに同意。郵便馬車では、トルコ人に攫われた人事不省の兄の帰郷という作り話を披露しながら、彼を連れて帰るが…

彼が教会で母と再開するシーンは、涙でました。
後半は、彼との身分や経済格差を目の当たりにし、彼の”信じて欲しい”という言葉とは裏腹の行動に翻弄され、切ない乙女心の自覚とともに、ムッキ〜〜!と転がった後は、ガクガクブルブルの展開が待っております。
え、何がなんだかわからない?
読んでのお楽しみということで秘密。

ヒーローが後半は残念な男で見せ場がなく、がっかりさせてくれる男子だが、そんな彼に訴えかけるようなヒロインの機転が切なくて良いのです。
ヒロインの成長だけではなく、弟くんも急成長!
一番かっこよかったのは、郵便馬車のおっちゃんだったナ。(それでいいのか?)
ブラボ〜〜!

海外ロマンス 読了一覧
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