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あなたの夢に染まる丘 カーラ・ケリー
2015年08月04日 (火) 23:20 | 編集

あなたの夢に染まる丘 (ラベンダーブックス)
2012/5/25
カーラ・ケリー (著)

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あなたの夢に染まる丘 

カーラ・ケリー

19世紀英国。スーザン・ハンプトンは生粋のレディ。25歳の誕生日を迎えたが、ギャンブル狂の父親のせいで社交界デビューもできず、結婚持参金もない。そのうえ家まで失うはめになり、伯母の屋敷へ身をよせるが、伯母はスーザンを使用人のようにあごで使おうとする。そんなハンプトン家から逃げ出すためスーザンは、自ら働きに出ることを決意。しかし、貴族未亡人のお付きの仕事を得てコッツウォルズへやってきた彼女をさらなる困難が待っていた。未亡人の気性は激しく、ドラゴンでさえおとなしく思えるほど。そして、もっと危険なのは同じく未亡人に仕えるハンサムな荘園管理人デイヴィッドだった。しゃくにさわるほど魅力的だけれど、身分がちがう彼から求愛されても、受けるわけにはいかず…。苦悩を抱えながらも、美しく強く生き抜く人々を丹念に描いたRITA賞受賞作。
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copyright 1996
The lady's companion

1997年度RITA賞(ベスト・リージェンシー・ロマンス部門)
ヒロインは、ギャンブル狂の父のせいで社交デビューどころか、全財産を無くし、伯母に頼るよりは自立の道を歩む覚悟をきめます。
働くという事自体、貴族からは反発を買う時代。難物の貴族未亡人の付添人を紹介され、すべてを捨ててやってきたけれど、レディ・ブシュネルは戦場で夫とともに戦いぬいた伝説の女傑で、なんでも自分でできると近寄るすきもなく…

作品中、ヒロインのスーザンが老夫人のために朗読するのは、ジェーン・オースティンの『エマ』。
オースティンが初めて書いた短編小説のタイトルが『レディ・スーザン』ということで、ヒロインの名前と同じだそうです。
この作品はイギリス文学の代表的な作家でもあるジェーン・オースティンをかなり意識しての作品作りがされています。
というわけで、根本にあるテーマは、言わずと知れた高慢と偏見
戦によって心の傷を抱えた、ヒーローのデイヴィッド。小麦に愛情をそそぐ荘園管理人の彼は、侯爵でも伯爵でもなく、平民。
孤児院出の優しい嘘つき。
難解な人物だった未亡人レディ・ブシュネルの人柄を理解するにつけ、スーザンは娘のような存在になり、レディ・ブシュネルのために共に戦い、レディという肩書への自らの高慢さと偏見を捨てる覚悟を決め、大きな飛躍を遂げるのです。
ラストに明かされる、意外な真実と、戦いに傷ついた心が癒やされる瞬間が、素朴で美しい物語です。

あらすじ
父はとっておきの魅力的な笑みを浮かべ、全てが上手くいくと言い続けてきた。もちろん何度もそれを信じてきた。
ちゃんとした持参金があれば、誰かの後妻くらいにはなれたのに、それだって結婚しないよりましよ。
社交デビューするための母の遺産はすでになく、その日の燃料も困る有り様だったが、25歳の今日、すべてを失った。
世間の評判、屋敷、家財道具、そして使用人たちも。
スーザンと父は伯母の屋敷で世話になることになったが、スーザンには伯母の小間使い同然の人生が待っているだけだ。
その上父は、母の唯一の形見の真珠も賭けに持ち出してしまった…
お父様はわたしからすべての物を盗んでしまった。わたしにはもう、失うものは何もない。
スーザンは仕事を見つけることに決めた。

スーザンはユダヤ人の経営する<スタインマン職業紹介所>へ足を踏み入れた。最初は25歳の美しい女性に紹介する職業はないと、ジョエル・スタインマンにあしらわれたものの、一通の手紙が運命を変える。
依頼主のレディ・エメリーヌは、義理の母レディ・ブシュネルの体調を心配し、何ヶ月も何度もお付きの女性を送り続けているが、どなたも気に入らなのだと言う。
依頼主に父が悪名高いロドニー・ハンプトンであることを明かし、自分の覚悟を見せることで、クイリング荘園へ行くことが決まった。

ジョエルは笑った。「おそらく、お友達はあなたが正気を失ったと思うでしょうね」
「あなたはそう思う?」彼女は率直にたずねた。
彼は肩をすくめた。「他人の人生を本当に理解することなどできると思いますか?」
「それでは答えになっていないわ」おもしろいことを言う人ね、とスーザンは思った。
「いいえ、ちゃんと答えましたよ」ジョエルはきっぱりと言ってウインクした。
「いいですか、ミス・ハンプトン。賢いユダヤ人は質問には質問で答えるのです。では、よい一日を」彼はまた家を見上げた。「あなたの幸運をお祈りしましょうか?」
「わたしには幸運が必要だと思う?」


冒頭の経緯。一年間の報酬は父の手袋代にもならないとあしらわれ、伯母からは、謝るか出て行くかだと言い渡された。
雪で立ち往生しながらも到着し、荘園の管理人デイヴィッド、台所番のミセス・スカーロングとその娘コーラと気さくに会話し、意気込みを見せるものの、問題のレディ・ブシュネルを前に、無残な結果を言い渡される。
ところが、行くあてもなく意気消沈するスーザンに、デイヴィッドは突然結婚を申し込み…!?

冒頭で気に入った紹介所のジョエルとの会話を抜粋しました。
ヒーローがどんな人物かは、あえて秘密にしておきましょう。
物語当初、自分の境遇を嘆くだけだったヒロインが、様々な階級に生きる人々の苦悩を目の当たりにし、変化することがテーマになっておりますが、それだけではなく、脇キャラの性格も配置も見事です。
孤独癖のあるレディ・ブシュネルは、第五連隊を率いる夫と娘の死と、息子へ強いた夫の後任への後悔にさいなまれる人物。
物語の最初は出番も少なく未知の人だった未亡人の人柄が見えてくるにしたがって、ヒーローとヒロインの間に強い連帯感が生まれてくる過程が、ぐっときます。
彼の願いであり、未亡人の後悔と真実への道だった、黄金の麦穂。ラストのワンシーンが映像のように鮮やかにイメージできて、涙が出てしまう。
情熱のぶつかり合いもエロティックなシーンもありません。昨今のヒストリカルロマとは違い、ある意味、地味ですが、笑いと涙と胸キュンが全部詰まった素晴らしい作品です。
是非一読。

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