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籠の中の鳥のように ジュリアン・ドナルドソン
2016年01月02日 (土) 16:46 | 編集

籠の中の鳥のように (マグノリアロマンス)
2014/12/9
ジュリアン・ドナルドソン (著)

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籠の中の鳥のように 

ジュリアン・ドナルドソン

十七歳のケイトは、いまにも死にそうな病気持ちの老人との結婚を強要されるなど、母親に人生を支配されている。母の手から逃れ、おばとともに遠いインドの地へと旅立ちたい彼女は、自由を求めた賭けに乗ることに決めた。しかし、賭けに失敗した先に待ち受けるのは、母親のどんな願いも抵抗せずに受け入れねばならないという未来だ。幼なじみのヘンリーが愛するブラックムーアの屋敷に招待されたケイトはそこで母親との賭けを実行することにしたが、スキャンダルにまみれた彼女の家族のせいでうまくいかず-。
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copyright 2013
Blackmoore

ありのままの自分でが気に入ったので、読んでみました。
先の作品の写実から雰囲気が変わり、ロマン主義を意識している作品。本当に器用な作家さん。
こちらの作品のヒロインは、多感な年頃の17歳。相手のヒーローも20の青年。母親や社会から抑圧された主人公たちのピュアなハートがとても美しく、胸が痛くなるような切ないロマンスです。
ストーリーはオーソドックスですが、ヒロインの一人称の観察眼や心象風景の描写が素敵です。辛い現実からブラックムーアを理想郷のように愛する二人の風景が美しく描かれますが、読み手の想像力も試される作品。
少女から大人の女性への変化の狭間で揺れ動く、キスさえもするかしないかの繊細なバランスが、かなり乙女チック。
かなり雰囲気は暗いですが、好きです。

あらすじ
明日ここを出たら  
違う。明日ここを出てブラックムーアには行かないのだった。再び絶望にとらわれた。
そのとき口笛の音が漂ってきて部屋にあふれた。クロウタドリのさえずり。急いで窓に手を置き、身を乗り出して見下ろした。ヘンリーが窓の下に立って、丸めた手を口にあてて口笛を拭いている。
「的を立ててきたよ」彼は叫んだ。「一緒に射的をしよう」

窓から抜け出し、ヘンリーとともに森めがけて走りだす。
矢と矢筒を取りあげた。ヘンリーは横に立ち、無言でこちらを見つめていた。わたしの手は怒りでぶるぶる震えている。深く息を吸い、弓を持ち上げて的を狙った。矢を放つ。矢は的を大きくそれて飛んでいった。予想どおり。
母はわたしの夢をわかってくれないし、望みを尊重もしてくれない。絶対に結婚しないとわたしが誓っていることも。
広場の端に立つカエデの巨木まで足を進めた。癇癪はおさまった。とはいえ、怒りと悲しみはまだ腹の中で渦巻いている。
ヘンリーもやってきて、同じように木にもたれた。わたしは矢を手に持って矢羽を眺めた。これが初めてではないが、ここから飛び立てればいいのにと思った。ヘンリーの視線が顔に突き刺さるのが感じられる。

「本当は何に悩んでいるの?」彼は小声で尋ねた。「お母さんとの喧嘩なんて、いつものことだろう。今日は何があってそんなに怒っているんだい?」

「母はブラックムーアに行くなと言うの」


冒頭の経緯。ヘンリーと妹のシルヴィア。二人が毎年行ってしまうブラックムーアにケイトは招待されることを夢見てきた。男にこびを売る母と姉の評判のせいで、ケイトはヘンリーの母から嫌われている。
ヘンリーとその祖父が手作りしてくれた屋敷の模型を宝物として、毎年ブラックムーアへの想像を羽ばたかせていた。そのあとは、母から自由になり、伯母と一緒にインドへ。
しかし、母はケイトが棺桶に片足をつっこんだ老人との結婚を断った腹いせにすべてをとりあげようとする。
ヘンリーが知恵をはたらかせ、ケイトは母の説得を心みるが、母はブラックムーアで三回結婚の申し込みをされたら、インドへ行ってもいいと賭けをもちかけた…。

ヘンリーには、ミス・セントクレアとの両親が勧める縁談があり、ケイトを招待できる最初で最後の機会かもしれない。
ケイトは到着早々、ミス・セントクレアとヘンリーの母の洗礼を受け、西翼に閉じ込められるような扱いをうけることに。
自由への夢を見ていた場所は、似たような鳥かごとなり、ケイトを圧迫する。しかも、男性を誘惑しようとしたとたん、親友だと考えていたシルヴィアに、ふしだらだと指摘され、母と同じようになるまいとしてきただけに打ちのめされることに。
そこで、ケイトはヘンリーから三回結婚の申し込みをしてもらうという考えを思いつくが…

絶対に結婚しないと誓った過去などが現在との合間に入りながら、お互い追い詰められる展開。
自由を象徴する鳥が、時に悲しく時に美しく散りばめられている。
また、無邪気に見える冒頭は、無邪気さを懸命に装っていた見せかけに近いものであることなど、ヘンリーとの友人関係を続けるためにケイトが抑えこんできた激情を、ピアノの曲という形で表現している。モーツワルトでは抑えこめない激情を理解する、ドイツの作曲家ヘール・シュポア(曲はファウスト)との出会いなどの小技も粋。
淡々としながらも、渦巻く感情の嵐がドラマチック。
良いロマでした。

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